先月21日の湘南ベルマーレ戦でマリノスが見せた華麗なパスワークからのゴールがTwitterを中心に世界中で話題となり、マンチェスター・シティ(イングランド、以降シティ)やペップ・グアルディオラとの比較・対照がしばしば行われていますが、CFGとしてはそれぞれのチームの戦術に介入することはしていないようです。
17本のパスを繋ぎ、最後はウーゴ・ヴィエイラがゴールネットにシュートを決めた一連の流れはサッカーの母国・イングランドにも伝わったようで、その証左として、イアン・チーズマン氏(@IanCheeseman)が『Manchester Evening News』に寄稿したコラムにマリノスの名前と例の得点シーンが登場しています。このチーズマン氏はBBCでシティのリポーターを長らく務めた人物であり、「ペップが監督をするのも容易だったかもしれない(というほどにシティのスタイルに似ている、という意)」「25ヤードのロングシュートがゴールのトップコーナーに吸い込まれていくように美しい」と評しています。
メルボルン・シティ、NYCFCに見られるCFGの影響
なお、チーズマン氏のコラムではメルボルン・シティ(オーストラリア)やニューヨーク・シティFC(アメリカ、以降NYCFC)についても言及されており、マリノスと同様にシティの影響が認められる…といった具合に綴られているので、実際に各クラブの様子を見てみましょう。まずはメルボルン・シティから。
チーズマン氏のコラムに登場するブリスベン・ロアー戦のハイライトですが、ボールを保持して攻撃に積極的な姿勢を見せるスタイルは、今季のマリノスやシティにも通ずるものが見受けられます。ちなみにメルボルン・シティは2017-18シーズンのリーグ戦を3位で終え、その後の優勝決定プレーオフも準決勝まで駒を進めたほか、FFAカップでもベスト8入りを果たしています。
続いては、NYCFCが本拠地ヤンキー・スタジアムで行ったFCダラス戦のハイライト。
シティのリザーブチームでも指揮を執った元フランス代表のパトリック・ヴィエラ氏が監督を務めるNYCFCも、ディフェンスラインを高めに設定したり、アタッキングエリアでの細かいパスワークを披露したりするなど、CFG傘下クラブに見られるポイントを共有しています。なお、NYCFCはFCダラス戦を終えた時点でイースタン・カンファレンス(東地区)首位に立っており、地区2位となる19得点を記録しています。
このように、CFGの核ともいえるシティ、ひいてはペップ・グアルディオラに近いスタイルがマリノスを含む各クラブで展開されています。しかし、だからといってCFG傘下ではこのスタイルを採用することが絶対条件ということでもないようです。
「我々はミニ・マンチェスターではない」
スポーツジャーナリストのティム・ウィグモア氏(@timwig)が『The Telegraph』に寄稿したコラムの中で、メルボルン・シティのチーフ・エグゼクティブを務めるスコット・マン氏の次のような発言が引用されています。
「我々(メルボルン・シティ)は独立したクラブであって、ミニ・マンチェスター(・シティ)ではない。驚くべき利益をもたらす世界規模のグループの一員ではあるが、地域に根ざして活動を行っている」
「CFGはこれまで我々に“オーストラリアで成功を収めるためにはこれを行え”というようなことを言ったことがない。彼らはいつも“マンチェスターではこのようにしている。ニューヨークではこうしている。オーストラリアでも通用すると思ったら試してみてほしい。それで、もしうまくいかなければ別のことを試してくれ”というふうに指示するんだ」
このように、CFGはメソッドを提示するというよりも、各地のクラブにマンチェスター流を紹介した上でそれをローカライズするよう勧め、傘下クラブ同士の相互刺激を促すだけでなく、こうすることで得られるノウハウの蓄積も行っている印象です。ここ数年でマリノスに加入した外国人選手を見ても分かるように、世界各国の選手データを収集することも当然含まれていると思われますが、CFGはチーム作りや戦術的な面においてもデータベースを強化しようとしているのではないでしょうか。
2017-18シーズンにおいてプレミアリーグ18連勝を達成するなど、圧倒的な成績で優勝を決めたシティが成功を収めている以上、彼らの手法に倣うのはある種当然の流れであるとも考えられます。その一方で、クラブがある国の文化・風土や、チームを構成する選手たち、そして彼らを活かすためのゲームモデルなど、“必ずしもシティと同じにならない面をどのように活かしているのか”という点に着目すると、より多くの視点からマリノスを楽しむことができるかもしれません。