徹底した情報収集とPDCAサイクルの遂行。ポステコグルー監督とその“右腕”が展開してきたトレーニングとは。

 

アンジェ・ポステコグルー新監督の右腕として入閣が期待されているピーター・クラモフスキー氏。オーストラリア代表の分析担当を務め、同U-17代表でも監督として手腕を発揮している人物ですが、彼はチームの練習にも関わっていたようです。

今回はクラモフスキー氏が応じた『MyFootball.com.au』のインタビューから、2015年当時のサッカルーズ(オーストラリア代表の愛称)が採用していたトレーニングメソッド、そしてスカウティングに関する部分を抜粋してお届け。対象が代表チームで、またソースも少々前のものではありますが、興味深い内容ですのでシェアいたします。

計画:“プレースタイルを実行するため”の練習

はじめに、トレーニングメニューはチームのプレースタイルに基づいて作成されているとのこと。分析チームが収集したデータを基に、スポーツ科学の分野で世界的に有名なクレイグ・ダンカン博士らとミーティングを重ね、精査された情報を共有します。

ここまで進んだところで、ようやくトレーニング内容の計画に移ります。チームとして標榜するプレースタイルを次の試合の相手に対して実行しつつ、同時に結果を得るためにはどのようにすればよいか…というところから逆算して練習内容をプランニングするとのこと。

実行:チェック、そして改善の繰り返し

こうしたプロセスを経てトレーニングセッションが行われるわけですが、ポステコグルー監督は練習時間のほとんどを観察に費やします。そして、練習が終わった後に良かった面と改善が必要な面を洗い出し、そこから翌日のプランを組み上げていくのだといいます。

実例として、クラモフスキー氏は2015年のアジアカップ前に行ったYo-Yoテストを挙げています。このテストは前述のダンカン博士によって実施され、得られた結果はチームの現状把握に役立ったと語っています。詳細なデータを活用してトレーニングを実行したオーストラリア代表は、母国開催となったこの大会で見事優勝を果たしました。

インタビューにおいてクラモフスキー氏が強調しているのは「トレーニングはチームのプレースタイルによって出来上がっている」ということ。“魅力的なサッカーを展開すること”を原点に、日々のトレーニングから浮かび上がる数々のポイントを常に改善し続けています。トレーニングにおいて見られる動きは試合でも実際に行われており、クラモフスキー氏は「それこそがトレーニングの目的だ」と話しています。

スカウティング:対戦相手を熟知することの重要性

ここからはスカウティングについて。サッカルーズはスカウティングに高いプライオリティを置き、次に対戦する国々の代表戦を分析するためにFFA(オーストラリアサッカー連盟)内部のスカウトを派遣していました。クラモフスキー氏曰く、対戦相手の選手たちが好んで食べるであろう朝食に至るまで調べ上げていたのだとか。

さて、スカウトが得た情報はFFAの内部文書として書面に起こされ、その後コーチングスタッフ、そして選手たちにも渡ります。これらを体系づけて実行することで、選手たちは対戦相手について理解を深め、その上でプレースタイルに反映させる方法を身に着けていったそう。


インタビューにおいて、クラモフスキー氏は詳細な内容というより全体の概要について語っていますが、「情報収集とPDCAサイクルの遂行を徹底し、合理的かつ緻密なメソッドに沿ってチームビルディングを図っている」というのが筆者の感想です。

ポステコグルー監督とクラモフスキー氏はサッカルーズ以外にもパナチャイキ(ギリシャ)、ブリスベン・ロアーやメルボルン・ビクトリー(いずれもオーストラリア)などで手を組んでおり、そのいずれも好成績を残していることが彼らのメソッドに有用性を担保しているといえそうです。

クラモフスキー氏のマリノス入りは未だ定かではありません(※27日現在)が、仮にコーチングスタッフとしての入閣が決まれば、マリノスでも質の高いトレーニングが展開されていくことでしょう。

https://www.myfootball.com.au/news/inside-socceroos-meet-anges-analyst

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